今年もクラウドファンディングでご支援頂き、無事、天然紙を漉くことができました。
誠にありがとうございました。
天然紙2019の制作期間中にSNSにて報告していた写真などを再編集し、ご報告させて頂きます。
杉葉集め
長田家の山の敷地は大滝町の神社奥と大滝ダムの奥などにある。
杉葉(すんば)は原料に使うわけではないのですが、楮を煮る際に使う灰汁を取り出すときに使う。
取りに行く時期が遅かったのか、ほとんどの葉が茶色くなっていて、青い杉葉を集めるのが大変。
なんとか足りる量を集めて工場に戻る。
お隣さんからもらった揉み殻
これもすんばと一緒で、きれいな灰汁を濾すのに使う。
木灰
長野県産のトロロアオイ
長野県から仕入れているトロロアオイの根っこ。
この根っこから紙漉きに必要な粘液(ネリ)を抽出する。
この根っこを洗って、叩いて、一晩くらい水につけておくと、どろっとした強い粘り気を持つ粘液がでてくる。
無選別那須楮
なかなか入手できない那須楮は特別に分けて頂いたもの。
灰汁を抽出する
ご近所さんに頂いた木灰から、濃い濃度の灰汁を抽出する。
灰汁で楮を煮るので、灰汁を取り出すときには灰が混ざらないように気を付ける。
一度、布で濾したら楽だろうと思ってやってみたが、
灰汁が出てくるのに時間がかかりすぎる。
すんば+揉み殻は隙間が多いからか、ざばざば濾せる。
昔の人の知恵はすごい…!
揉み殻を引き詰めて、すんばを入れて、灰を入れて、水をそそぐと・・・
そうすると灰汁がでてくる。
ちゃんと強アルカリ性。
濃度が高い灰汁じゃないと、楮がやわらかく煮えない。
楮を煮る
強アルカリの灰汁で煮て、楮が柔らかくなるまで、灰汁を足したりして調整する。
時間がどれくらいかかるかが、まだ読めない。
試験紙ではアルカリの濃度が強くても、うまくやわらかくならないことも多い。
煮過ぎると、繊維の風合いと艶がなくなるので、難しい。
一方、いつも使っている苛性ソーダやソーダ灰なら、2~3時間で煮えてしまう。
楮のちりより
ちりとりとか、ごみとりとか、いろいろ呼び方がある。
うちではちりよりと呼んでいる。
楮の節の部分などのかたい部分や、黒い部分などを手作業でとっていく。
他の一部植物の原料では、この工程は機械化が進んでいるが、
楮は繊維が丈夫であるため、機械が壊れてしまう。
現状では、どこの工場でもすべて手作業で行っている。
弊社は柄入りの紙を多く漉く工場なので、ちりよりにそこまで力は入れていないが、
画家や版画家のための和紙を漉いているところは、ちりよりを何日もかけて行う。
楮の叩解
ちりよりが終わったら、楮を木の棒でたたく。
普段はなぎなたビーターという機械で繊維を細かくしているが、
木の棒でたたく方がより繊維が細かくなる。
布を洗う
紙を漉いて、生の濡れている紙を重ねて積み上げるときに、
紙と紙の間に布を重ねる。
この布を煮沸した水で煮て、水にさらして洗う。
漉く
山水とネリと楮の繊維を混ぜ合わせて、簾桁の上に流していく。
水の流れで繊維の大きなうねりができ、それが雲肌と呼ばれる模様になる。
脱水
積み重ねた紙と布をプレス機で押す。
半日程、脱水して、板張りへ。
板張り
脱水した後に、紙を布と一緒にはがして、
半なまの紙が破れないように銀杏板に張る。
張ったら、布だけをはがして乾燥室に入れる。
板張りにすることで、光沢が増す。
乾いたら完成
板からはがして、検品し、完成。
A4天然紙、天然紙はがき
A4天然紙は今回初めて制作。
A4とはがきは板張りはしていないので、少しふわっとした仕上がり。
それでも光沢がある。
今まで天然紙をプリンターなどに通したことはないが、
実験したら、インクジェットもレーザーもきれいに印刷できた。
天然紙揉み紙でつくった名刺入れ、札入れ
天然紙を揉み紙にして、和紙小物を作った。
揉み紙とは、膠(にかわ)を塗って、揉みこんだ紙のこと。
弊社でいつも作っている製品より、かなり丈夫な質感になった。
さいごに
天然紙のプロジェクトについて、たくさんの応援ありがとうございました。
来年もクラウドファンディングをするかはわかりませんが、同じ時期に天然紙を漉く予定です。
2019年の今後の予定としましては、以下が決定しています。機会がありましたら、ぜひともお越しください。
5月の3日、4日、5日 紙と神の祭り 大掘り出し市
8月31日、9月1日 越前市千年未来工芸祭
その他イベントは随時ホームページでお知らせしていきます。
工場見学や和紙ショップについても、どうぞお問い合わせください。
今年度もよろしくお願いします。
※2020年11月22日追記
天然紙は襖判1枚8,000円(税抜)から販売しております。
お気軽にお問い合わせください。
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